暴落時に売ると逃すもの:S&P 500「最良の10日」の計算方法
暴落ニュースがあふれる日には「とりあえず売っておこう」と思いがちです。しかし20年間でS&P 500が最も大きく上がった日の多くは、まさにそんな日のすぐ近くにありました。計算方法、日付、下落率と変動の強さを自分で測る式、結果を変える落とし穴まで、実際の数字でまとめました。
1. 計算方法:最良の日だけを除いて掛け直す
- 日次リターン = 今日の終値 ÷ 前日の終値 − 1
- 保有し続けた倍率 = (1 + 1日目のリターン) × (1 + 2日目のリターン) × … × (1 + 最終日のリターン)
- 最良のN日を逃す = 上昇率上位N日のリターンを0にして(その日は現金)、同じ掛け算をやり直す
期間は2004年12月31日の終値から2024年12月31日の終値まで(5,033営業日)です。配当を再投資したトータルリターン指数(^SP500TR)と、価格だけの指数(^GSPC)を別々に計算しました。
2. 結果:逃した日数ごと
| 逃した日 | 配当込み | 価格のみ |
|---|---|---|
| 0日(保有し続ける) | 7.18× | 4.85× |
| 最良の5日 | 4.53× | 3.07× |
| 最良の10日 | 3.29× | 2.23× |
| 最良の20日 | 1.97× | 1.34× |
| 最良の30日 | 1.29× | 0.88× |
金額にすると、US$10,000を保有し続ければ約US$71,750、最良の10日だけを逃すと約US$32,870です。年率では10.35%と6.14%。5,033日のうちわずか0.2%の10日が、結果の半分以上を分けました。
3. 最良の10日はいつだったか
S&P 500(配当込み)の高値からの下落率、2005–2024 · ★ 最良の10日
| 日付 | その日の上昇 | 高値から |
|---|---|---|
| 2008-10-13 | +11.6% | −34.5% |
| 2008-10-28 | +10.8% | −38.6% |
| 2008-11-13 | +6.9% | −40.3% |
| 2008-11-21 | +6.3% | −47.6% |
| 2008-11-24 | +6.5% | −44.2% |
| 2009-03-10 | +6.4% | −52.4% |
| 2009-03-23 | +7.1% | −45.5% |
| 2020-03-13 | +9.3% | −19.8% |
| 2020-03-24 | +9.4% | −27.6% |
| 2020-04-06 | +7.0% | −21.1% |
10日のうち9日は、その日の終値がそれまでの最高終値より20%以上低い日でした。残る1日(2020年3月13日)も−19.8%で、ほぼ同じ位置でした。2008年の金融危機に5日、2009年の底値付近に2日、2020年のコロナ暴落に3日が集中しています。
4. なぜ暴落相場に集中するのか:変動はまとまってやってくる
相場が大きく揺れる時期には、大きく下がる日と大きく上がる日が一緒に現れます。同じ20年間で最も下がった日も、2020年3月16日(−12.0%)、2020年3月12日(−9.5%)、2008年10月15日(−9.0%)のように、同じ暴落相場の中にありました。
- 最良の10日のうち7日は、最悪の10日のいずれかから14日(暦日)以内にありました。
- 2020年3月13日(+9.3%)は、最悪の日である3月12日(−9.5%)の翌日で、3月16日(−12.0%)の3日前でした。
- 最良の10日の20日ボラティリティは、平常時(過去1年の中央値)の1.2〜8.0倍でした。20年全体で見ると、普通の日は0.97倍です。
そのため、怖い日を避けて手放した人は、たいていその直後に来る最良の日も一緒に逃します。いつ戻ればよいかを教えてくれるシグナルはありません。
5. 自分で測る方法:下落率の段階と「風」
- 下落率 = 今日の終値 ÷ これまでの最高終値 − 1
- 段階:0〜−10% ノイズ、−10〜−20% 調整、−20%以下 嵐(持ちこたえる区間)
- 風 = 直近20日の日次リターンの標準偏差 ÷ その値の過去252日の中央値(1× = 平常)
- 風が弱まる = 嵐の中で、風がその嵐の最大の風より25%以上低くなった最初の日
2008年の例(価格指数):最高終値は2007年10月9日の1,565.15。2008年7月9日の終値1,244.69は、1,244.69 ÷ 1,565.15 − 1 = −20.5%で、初めて嵐に入った日です。
最高終値は新高値が出るたびに変わり、20日・252日の期間も毎日1日ずつ進むため、すべての値を毎日計算し直す必要があります。
6. 結果を変える3つの落とし穴
- 仮定の計算:「最良の日だけをぴったり逃す」人はいません。実際に売った人は、最悪の日も一緒に避けていたかもしれません。そのため7では「−20%で売り、以前の高値で買い戻す」ルールで別に計算しました。
- 配当を含むかどうか:価格だけで見ると、保有し続けた場合も4.85×に下がり、最良の10日を逃すと2.23×になります。比べるときは同じ指数同士で比べてください。
- 高値の基準:下落率は「いつからの最高終値」で測るかによって変わります。データを短い期間しか読み込まないと本当の高値が抜け落ち、下落率が小さく出ます。
7. 実例:2008年に嵐のラインで売っていたら
2008年7月9日、S&P 500は終値1,244.69で−20%の嵐のラインを超えました。この日に売った人と保有し続けた人を、指数が以前の高値を取り戻した2013年3月28日(1,569.19)まで比べました。売った人が以前の高値を確認してから買い戻した場合、その間の利益は0%です。
嵐のラインを超えた後も、2009年3月9日(676.53)までさらに45.6%下がりました。持ちこたえるのは簡単ではありませんでしたが、同じルールで1927年以降のS&P 500を計算すると、保有し続けた場合は年6.17%、嵐のラインで売った場合は年2.62%でした(検証した8つの市場すべてで保有し続けた方が高く、売買コスト0.1%を反映)。
8. 限界
指数は最終的に以前の高値を取り戻しましたが、個別銘柄は二度と戻らないこともあります。市場によっても異なります。金では、最良の10日のうち嵐の中にあったのは2日だけでした。上の数字はすべて、税金・手数料・為替を反映していない過去データによる計算です。
9. 手作業でやる場合の毎日のチェックリスト
- 取引終了後、同じ指数の終値を記録し、これまでの最高終値を更新します。
- 下落率を計算して−10% / −20%と比べ、ノイズ・調整・嵐のどれかを決めます。
- 直近20日の日次リターンの標準偏差を求め、過去252日間のその値の中央値で割って、風の強さを出します。
- 嵐の最中なら、その嵐の最大の風を記録しておき、今日の風がそれより25%以上低くなったかを確認します。
- 見ている期間の日次上昇率を並べ替えて上位10日を探し、その日の下落率を確認します。期間を変えるたびにやり直します。
この面倒な作業を、毎晩自分でやりますか?
頭の痛い手順は忘れて、Storm Radarをひとつオンにしておくだけ。相場がノイズ・調整・嵐のどこにいるのか、高値からどれだけ押し下げられ、揺れがいつもよりどれだけ激しいかをパネルに表示し、最も大きく上がった日に星印をつけて、嵐のど真ん中にどれだけ集まっていたかをひと目で見せてくれます。売買シグナルではなく、揺れるメンタルをしっかり支えるいちばん簡単なシートベルト。自分だけ知らずに見過ごすのは、もったいなくありませんか?
Storm Radarを見る →このガイドはチャート分析のための資料です。利益を保証するものではなく、投資には損失のリスクがあります。表と事例は過去データから計算した結果であり、将来の収益を保証するものではありません。
データ:Yahoo Finance ^SP500TR・^GSPC 日足終値(2004-12-31〜2024-12-31)、ChartArmoryが独自に計算。「最良の日を逃したら」の計算は広く知られた方法を、上の式で計算し直したものです。